赤ちゃんの取り違え、ってすごい設定だよね
1940年代にはよくあった話だとか…
ゾッとする…けど
この映画では、2つの家族のコントラストが深く描かれていて、何が本当の幸せなのか、考えさせられたよ
今回はその象徴的な家族の対比に焦点を当てて、ステップファミリーを見ていくね
はじめましての方、こんにちは。最愛シンパパと恋愛中のえむと申します。プロフィールはこちら
映画を見ながら
血の繋がりか、育ててきた時間か。
“親になるということ”にとって何が一番大切なのか、考えてみよう。
【あらすじ】『そして父になる』
大手建設会社に勤務するエリート会社員・野々宮良多は、仕事も家庭も順調で、何不自由ない幸せな生活を送っていた。そんなある日、病院から連絡が入り、良多は6年間愛情をかけて育てた息子・慶多が、赤ん坊の時に取り違えられた他人の子だと告げられる。
U-NEXT 映画『そして父になる』 2013 日本
【相関図】血の繋がらない子供との6年間
【かんたん図解】家族構成
《 家族A 》
- 父親A:福山雅治
- 母親A:尾野真千子
- 長男A:二宮慶多(血縁関係は家族Bの子供)
《 家族B 》
- 父親B:リリー・フランキー
- 母親B:真木よう子
- 長男B:黄升炫(血縁関係は家族Aの子供)
- 長女:滝沢美結
- 次男:押場大和
これは…どうする…
【比較】子供を取り違えられた“真逆の家族”
物語は《家族A》長男のお受験に始まります。
《 家族A 》都会の高層マンションに住む裕福な家庭
- 都会の高層マンション
- レクサス
- お受験
- ピアノ教室
父親(福山雅治)
バリバリ働くイケイケのサラリーマン。教育熱心で、隙がない。子供と一緒にお風呂も入らない。有能だが冷徹でもあり、自分が手に入れたいと思ったものはお金を積んででも手に入れようとする。自分の両親に対しても冷たい。家族Bの父親に懐いていることに対し高いプライドから劣等感を感じる。
母親(尾野真千子)
ビシッとした夫の後ろで優しく家族をサポート。子供の取り違えに母親なのになぜ気づかなかったのか自責し、まわりの評価を気にしている。
長男(二宮慶多)
おっとりして優しい子。練習してはいるが、ピアノはうまくならない。
《 家族B 》田舎の狭い電器屋で5人暮らしの家族
父親(リリー・フランキー)
子供たちと等身大で一緒に遊ぶ。ハンダゴテで壊れたラジコンも直して興味津々の子供たちに取り囲まれる毎日。強い妻の機嫌を伺い、その意向に沿った言動をとる。
母親(真木よう子)
強い母ちゃん。3人の子供と夫、家族を引っ張る。
長男(黄升炫)
意思が強く、意に反する時は大人相手に反抗的な態度をとることも。「オーマイガット」が口癖。下に、長女と次男がいる。
都会で暮らす家族A、田舎で暮らす家族Bのコントラスト
都会の無機質な高層マンションで静かに時が過ぎる《家族A》と、ガラクタのようなものが溢れる田舎の狭い家で和気あいあいと楽しむ《家族B》が、強いコントラストで描かれています。
ふたりのパパ
子供のしつけ
- 《 家族A 》箸の持ち方などしつけに厳しいパパ
- 《 家族B 》ストローの噛み癖があるパパ(長男に影響)
お風呂の入り方
- 《 家族A 》子供も一人で入る(知育おもちゃあり)
- 《 家族B 》子供もパパもみんなで入る
パパの仕事場
- 《 家族A 》自宅の書斎は一人で集中
- 《 家族B 》家族にも近所の人にもオープンな場所
子供との遊び方
- 《 家族A 》まったく遊ばないパパ
- 《 家族B 》子供と同じ目線で遊ぶパパ
壊れたロボットの直し方
- 《 家族A 》ちょっと試して「これもうダメだから、ママに新しいの買ってもらいな」とイラだつパパ
- 《 家族B 》なんでも直して、子供たちから「すごい」と尊敬されるパパ
子供たちに羨望の眼差しで見つめられ愛される《家族B》パパとの対比がこれでもかと…
ふたりのママ
家庭の中のママ
- 《 家族A 》ワンオペで孤独。優秀な夫に対し劣等感を感じている
- 《 家族B 》気が強く3児と夫を引っ張る肝っ玉母ちゃん
取り違えられた実子との接し方
- 《 家族A 》家族Bの長男との遊び方がわからないママ
- 《 家族B 》家族Aの長男にウインクして緊張をほぐそうとするママ
転んで擦りむいたケガに対する考え方
- 《 家族A 》血でたね…痛かった?と心配する
- 《 家族B 》ちょっと血が出たけどすぐ止まったから、と特に気にしない
子供はどうする?
《 家族A 》パパの言葉
二人ともこっちに譲ってもらえませんか?お金ならまとまった額用意できますから
映画本編より
大学時代の友人である弁護士を味方につけて、血の繋がりのある実子と、6年間育ててきた血の繋がらない子供の二人を、お金で引き取ろうと試みます。
「私たちの子が不幸だっていうの?!」確かに“お金は誠意”発言を繰り返ししていた《家族B》でしたが、さすがにこの発言には《家族B》パパも手を上げてしまいます…
《家族B》パパは「負けたことないやつってのは、本当に人の気持ちがわかんないんだな」とボソっと言い残します。
育てた子も可愛い、実の子もほしい。そう思うパパの言葉が本当に真逆なんだよね
《 家族B 》パパの言葉
子供は時間だよ。父親かて、取り替えのきかん仕事やろ
映画本編より
一方、子供たちとたくさんの時間を過ごす《家族B》パパは、仕事ばかりで子供と過ごそうとしない《家族A》パパに対し、何度も「子供と遊んでやって」と伝えます。
自分が正解と信じ、否定し続けてきた《家族A》パパでしたが、子供の交換になかなかうまく対応できず、だんだんと劣等感にも似た複雑な気持ちを抱き始めます。
最初はバカにしてた電器屋《家族B》を見習うようになるんだよね
なんだかんだ優しく見守ってくれる《家族B》パパの優しさもしみるね…
【比較】ふたつのステップファミリーと継息子
《家族A》パパの「血縁」を重視する父、関係ないと言う継母
ところで、実は《家族A》パパの両親は子連れ再婚のステップファミリーでした。厳しい実父と優しい継母に対して、和みながらも敬語で話す様子が異質でもありました。
- 実父:夏八木勲
- 継母:風吹ジュン
- 長男=実兄:高橋和也
- 次男=《家族A》パパ:福山雅治
《家族A》パパの実父:夏八木勲
厳格で血の繋がりを重視。「馬と同じで血が大事だ」という。
厳格で頑固な父親に対し「もう嫌われてるよ」と言いながら、エリート《家族A》パパ自身もその道を歩んでいるという矛盾…
《家族A》パパの継母:風吹ジュン
複雑な表情で夫の発言を流しながら、息子本人には「血は繋がっていなくても関係ない。私はそういうつもりであなたたちを育てたんだけどな〜」と優しく諭す。
《家族A》パパの実兄:高橋和也
「僕はお母さんに似たのかな」と血の繋がらない継母を気遣う優しい実兄。
衝撃の真相!罪を犯した継母を守る子供
そして、裁判での尋問で明らかになったのは、衝撃の事実でした。
裁判での告白
…事故ではありません。
【家族A】が幸せそうだったので、わざとやりました。再婚したばかりで子育てに悩んでいて、イライラを他人の赤ちゃんにぶつけてしまいました。
【家族A】は一番高い病室でしたし、旦那さんは一流企業に勤めていて、喜んでくれる家族もいて、それに比べて、私は…
正直スッとしたというか、不幸なのは自分だけじゃないんだって。
夫の子供も今は懐いてくれていて、そうしたら自分のしたことが恐ろしくなってきて、きちんと罪を償いたいと思うようになりました。
本編
なんとシングルファザーと結婚したばかりの女性が犯人だったのです…
オーマイガー…
傷ついた継母を守る少年
- 実父:ピエール瀧
- 継母:中村ゆり(犯人の看護師)
- 長男:継母を守ろうとする男気のある少年
- 長女
裁判では時効により無罪となった看護師から送られた「誠意」を返しに《家族A》パパは、彼女の自宅へ訪れます。
「あんたのせいで俺の家族はめちゃくちゃですよ」と責めかけた時、継子の少年がドアの外に出てきて、母親をかばうように威嚇する態度を見せました。
「お前は関係ないだろ」と言うと、「関係ある。僕のお母さんだから」と引かない少年の男気に血が繋がっていなくても親子になれるという事実を突きつけられた《家族A》パパ。少年の肩をポンと叩くと、何も言わずに去りました。
少年、かっこいいよ…
(自分は継母に対してどうだったのか…)
そんなことがよぎったであろう《家族A》パパは、継母に昔の言動を謝ろうと電話するのですが…
継母は遮るように「いいわよ。もう忘れちゃった。あなたとはもっとくだらない話がしたいわ」と言い、明るい声ですべてを許す言葉をかけました。
継母と継息子との絆…(うるうる)
【結末】子供の愛に気づき“出来損ない”を認めたエリートパパ
大切なことに気づいた瞬間
家族になろうと《家族B》を見習ってできる限りの努力はしたのですが、《家族A》夫婦はなかなか実子である元《家族B》長男と心の壁を越えられないでいました。
「パパとママのところに帰りたい」と言う実子(元《家族B》の長男)…
実子への愛情がわくのと同時に、6年間育ててきた息子を裏切っているような気持ちになり、複雑になる《家族A》ママの気持ちも切ないんだよね…
そして《家族A》パパがカメラの中のデータをふと見返してみると、後ろ姿や寝てる自分の姿を息子が撮ったたくさんの写真が…。
自分が見ていない時に、息子はこんなに見てくれていたことを突きつけられます。思い出を見返す余裕もなく、息子の愛に気づかずに過ごしてきた日々が蘇り…
知らない間に撮られてた愛ある写真ってグッとくるよね
プライドを捨てて愛をぶつける
子供の交換(ミッションと呼ぶ)に先に音をあげたのは、父になれずにいた父でした。
《家族B》の元へ行くと、エリートで優秀で勝ち続けてきた《家族A》パパは、ついに子供に負け顔を見せ、精一杯の愛情をぶつけました。
でもたぶん、交換する前、良かれと思って伝えた「パパより《家族B》パパの方がお前のことを好きだ」という言葉に、知らずしらずのうちに心を閉ざしてしまった息子。追いかけられても追いかけられても「パパなんて、パパじゃない!」と初めて強い口調で反抗します。
それでもめげずに、《家族A》パパは今まで息子からたくさんの愛情をもらっていたことに気づいて、それに気づかなかったことを謝りました。自分も決して完璧じゃないということを、6年間育ててきた“血の繋がらない”息子に伝えることで、ついに心が通じ合いました。
こうしてやっと「父になる」スタートラインに立って、物語は終わるのですが…
【考察】結末のその後を考える
さて映画は結末を迎え、結局その後、ふたりの子供はどのように、どちらの家族で暮らすことになるのかは、視聴者の想像に委ねられます。
隔週で交換?
私が思い描いた“その後”は、子供たちは隔週で相手方の家族で暮らしながら徐々に仲良く環境に慣れるようにしていき、子供たちの気持ちの変化を見ながら決めていくかなと想像しました。
でも現実には小学校があるよ…
確かに難しい年齢…
元に戻して“育ての子”を育てる?
では、もとい“育ての子供”を育てながら、断続的に実子との関係を築いていく?
でも《家族B》は血の繋がっている子供とうまくいってるわけで…
ふたりの子供を《家族B》に託す?
そうなると、子供第一で考えるなら苦渋の決断として、ふたりの子供を田舎の電器屋《家族B》に託し、《家族A》夫婦は実子との絆を結ぶまで足繁く通うしかないか…とも考えます。
そもそも移住すべき?
都会エリート《家族A》夫婦は《家族B》の近くに引っ越して、毎日のように顔を合わせるという大きな変革が、まず必要かもしれません。
優秀な《家族A》パパにとっては一流企業の第一線から去ることは苦しい選択かもしれませんが、このご時世、場所を選ばず優秀に働くことは可能ですし、“父になる”ためにすべてを捨てて再起することができる、力のある人だとも信じられます。
あのパパなら何とかするに違いない!
【まとめ】血の繋がりより、向き合う姿勢。社会で育てよう
結局、子供を育てる上で大切なことは「血が繋がっているかいないか」ではなく、「子供に真摯に向き合っているかどうか」だと思いました。
それは大きな視点で捉えれば、自分の子供でも近所の子供でも同じで「社会全体で子供を育てる」ことの重要性にも繋がります。
「みんなで楽しく育てていこうよ」
そんな言葉が《家族B》パパから聞こえてきそうです。
心の余裕だね〜
陽気で朗らかで子供たちに人気の《家族B》パパは、ナチュラルに子供たちに溶け込んでいましたが、それができない優秀だけど不器用な《家族A》パパには、まずは本から知識を得るという方法もオススメです。
ステップファミリーについてもっと詳しく学びたい方向けに、当ブログで頻出のこちらの書籍をご紹介します。
ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン『ステップファミリーのきほんをまなぶ』は、家族それぞれの立場で起こりうる対立やその原因・解決法などが載っており、さまざまなシチュエーションが網羅されているので、非常に参考になります。
当ブログで度々引用させていただいている『ステップファミリーのきほんをまなぶ』。ステップファミリーの人はもちろん、これからステップファミリーなるかもしれない人にとっても有益な学びが満載!絶対に読んでほしい一冊。オススメです。
まわし者じゃないんだけど(笑)、ただただみんなにステップファミリーのことを知ってもらいたいの!救われると思うのよ
子供を育てる上で大事なのは、一対一で真摯に向き合うこと。
自分の子供だけ大事にするのではなく、血の繋がらない子供もみんな、社会全体で育てよう!
あ〜色々考えさせられたしキャストも素晴らしくていい映画だったな〜
カメラワークやピアノも美しかったし
シーンが変わる時の音と映像の余韻やドキッとさせられる切り方もすごい吸引力だったね
ストーリーも素晴らしいけど、ぜひ芸術的な部分も感じてみてほしい〜
Photo : 映画『そして父になる』著作権及び肖像権は、各権利者に帰属します